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平成25年2月定例勉強会

お城を楽しもう

  講師: 川岡 洽氏 (日本古城友の会幹事)

青年の家・学びの館 午前10時~12時
 32名の参加
 2013.2.23(土)午前10時、2月定例勉強会に32名(会員20名)の方々が参加されました。

 高尾副部長の司会で始まり村田広報部長の挨拶の後、講師の川岡洽氏からお城を楽しもう」をテーマに、お城の知識<基本編>を詳しくお話しいただきました。限られた時間ではありましたが、詳細な資料とプロジェクターによる映像を駆使してたっぷりとお話し頂きました。

 今回の勉強会では、「お城」の基本的な成り立ちを中心に、お城とは何か、城の種類、曲輪、丸、普請と作事、土塁、塀・橋・濠、石垣、石積み、天守、殿舎、櫓(矢倉)、城門(虎口)、平城、山城など詳細に亘ったお話を伺うことが出来ました。今後、お城について考えてゆく過程で大変参考になったと思います。今回の基本編に続き、次回は全国の面白いお城のお話が聞けることを期待しています。

 最後に、私部城跡が国史跡に向けて、交野市教育委員会を中心に精力的に発掘調査が続けられていることに言及され、史跡指定が決まれば誠に喜ばしいことで、我々としてもできる限り応援して行きたいと締めくくられました。
 
 HPの掲載に当たり、講師のご厚意で当日配布されたレジメなどを提供頂きましたこと、記して感謝申し上げます。
 「城」という字を分解すると、「土」から「成」ると書き、戦国時代の山城は文字通り、山の土を削り盛土して構築されていました。また、お城といえば、大阪城や姫路城のように天守閣が立ち、石垣造りというイメージが強いですが、実は日本にある城郭のほとんどは中世の山城で、その数はなんと全国で3万とも4万ともいわれているそうです。これは各地域にいた中小領主が軍事拠点とした小規模な山城が数多く点在するためで、ちなみに織田信長が登場した安土桃山時代から江戸時代にかけ、城の歴史も「統一」へ向かい、天下人や大名による大規模な城へと統合され、全国で200ほどの数になったとされています。
勉強会 風景

高尾副部長より川岡氏の紹介

講師の川岡洽氏

当日配布されたレジメ
「お城を楽しもう」
川岡 洽氏(日本古城友の会幹事)
城(キ・ジョウ・シロ)
 土を盛って固めた城のこと、打ってまとめ固める意を含む
    丁(テイ)たんたんとたたくこと、戊(ほこ)四方から土をもりあげる
 柵も城と共にキと読まれ関・堰・垣などのキに通じ内と外を限るといった意として用いられ
 外敵から身を守る構造物を指す。
 城は奈良時代から(じょう)と読まれ、十四世紀末ごろから(しろ)と呼ばれるようになった。
 城の古い形態として稲城。葛城(日本書紀)、茨城(常陸風土記)などがある。

郭(カク・クルワ)
 構築された城塁に門を開けた状態を形象化したのが「享」である。これに「邑」つまりムラとかマチ
 という字を変形した「阝」オオザト編をくわえれば郭になる。

城郭
 城・・・敵を防ぐ為に築いた軍事的構造物
 郭・・ 城・とりでなど一定の区域の周囲に築いた土や石のかこい。曲輪。

 

「お城」
 古くは柵や石垣又は堀・土塁をめぐらした一番外側にある構築物の中側全部が城郭。
 中世では天険を利用して防禦を施す山城が発達一番外側にある構築物の中側全部が城郭
 戦国時代以降は領内統治域内居住、権勢表示、大手門搦手門など一番外側にある構造物の
 中側全部が城郭。 以上がいわゆるお城である。

「お城を形成しているもの」
・土木工事によるもの(普請)
   ・堀(濠)、土塁、石垣、土橋、塀、曲輪,切岸、堀切、竪堀
・建築工事によるもの(作事)
   ・天守,櫓、殿舎、蔵、門,橋、塀、屋敷、外
   ・厩、台所、

築城の前に
 ・地取り・・・・城地の選定(選地)
 ・縄張り・・・・城の構築の計画(設計)
 ・普 請・・・・土塁・堀・石垣・等の土木工事
 ・作 事・・・・建物等建築工事

 地取り(選地)
   防衛・戦闘を目的とする城は可能なかぎり天然の要害を求め戦闘に効力の大きい地形を選ぶ。
   戦闘目的でない城は氣候,風土、水や食料が確保でき交通の便の良い地形を選ぶ。

 縄張り(設計計画)
  城の基本を決めることは大変で頭脳と経験、技術がものをいう仕事です
  ・四神相応・・・・中国から来た設計原理です
      東の方に・・・・青竜の神が宿る、流水がある地形
      南の方に・・・・朱雀の神が宿る窪地の地形
      西の方に・・・ 白虎の神が宿る大道のある地形
      北の方に・・・ 玄武の神が宿る

・平安京が東に鴨川、南に巨椋池、西に山陽道、北に船岡山を配しているのは四神相応の地形を考慮したといわれます
・江戸城の位置もこれにかなっており朱雀 大手、虎の門とか乾門などは玄武の神とか青竜にあやかって城が栄えるよう設計されています。

普請(土木工事)
 ・濠・土塁・石垣・柵等の工事自然の要害をどのように使うか手を加えるか

作事(建築工事)
・一般的には家屋の建築のことですが城の場合城内の建築物全てをいう


 

城の平面的な形
 梯郭式縄張り・・
   本丸を中核に梯すなわち段下がりに二の丸・三の丸を張り出す形式です
 連郭式縄張り
   本丸・2の丸・3の丸を串団子のように連ねて配置した形式
 輪郭式縄張
   本丸の周囲を取り囲むように2の丸3の丸を配置した縄張り
 渦郭式縄張り・ 本丸2の丸3の丸を渦巻状に配置する会式
 平郭式縄張り・本丸2の丸或は天守、結丸を渦巻状に配置する形式

城の種類 使用目的による分類
  本城・・一国の領主の居城をいいますが主城、根城ともいいます
  支城・・重臣、家老一族を置いて守らせる被官の城をいいます
  枝城、出城、根城ともいいます
  陣城・・長城を覚悟する場合は臨時の城をつくります
  付城・・攻撃の時に敵城の前に付ける城。対城ともいう
    水谷城(虎御前山城)
     三木城(30城余も造られたといわれています。確認済み20城
  居館 つつじヶ崎館・一乗谷館

城の種類 立地による分類
 ・山 城    飯盛山城・佐和山城(比高 150m以上)
 ・平山城   犬山城 (比高 20m~100m)
 ・平 城    私部城(交野城)、大阪城、名古屋城、駿府城
        (平野部の築城で政治、経済がメーンの城)
 ・湖 城    膳所城、坂本城
 ・川 城    人吉城、広島城
 ・柵 ( )   (東北) チャシ(北海道)グスク(沖縄)
 ・環濠集落     神籠石、朝鮮式山城
 ・寺院城郭   (比叡山・百済寺・金剛林寺)
 ・王城( 城)    都城(都城・・藤原京、平城京、平安京)
 ・倭城・     文禄慶長の役で日本軍が朝鮮の各地に築いた城、主に慶尚南道
 ・邑城・羅城  ・韓国・中国の城郭は一村一都市全体を城郭で囲んでいる
 ・寺内町

曲輪と丸
 曲輪とはそれぞれの役割、機能の応じて城内にある区画をいう。これらの区画が丸と云われるようになったのは江戸時代に入ってからで中世戦国期は曲輪と呼んでいました。ですから曲輪も丸も同じことです。

 「本丸」・・・城の中心
 「二の丸」・・・二番目に重要
 「三の丸」・・三番目に重要な曲輪
 「西の丸」・・隠遁所
 「山里曲輪」・・秀吉が茶の湯をたのしむ為,庭と数寄屋を構えた。
     名護屋城、伏見城、淀城、姫路城、金沢城、江戸城などにあります。
 天守曲輪、・・ 帯曲輪・・、松の丸,竹の丸 煙硝曲輪・・
 八幡曲輪・・ 腰曲輪・・ 米蔵曲輪・・、
 人質曲輪、・・ 水の手曲輪・・ 兵糧曲輪・・

塀および橋
 土塀 半永久的
 骨組みを持つ土塀(主流)、柱を立て腕木を通して竹の小舞を結んで土壁を塗る。
    豊臣大阪城、丸亀城天守(太鼓壁)熊本城長塀
 骨組みのない土塀。 粘土のブロックを積み上げる、表面に土塀を塗る  備中松山城、姫路城
 築地塀(版築)   二条城二の丸、姫路城水の一門
 海鼠塀    塀の下半分に瓦をはっている
 太鼓塀
 板塀 臨時的   源氏塀 多門(多聞)


 土橋   城郭の虎口(出入り口)部分を残して左右を濠とするもの
    大坂城  大手口、京橋口、玉造の桜門
掛橋 臨  戦時は撤去して敵の侵攻を妨げる 引橋、車橋、
算盤橋、二重橋、筋違橋、廊下橋

濠(堀)
 水堀・・近世城郭に多い 平城・平山城。 河川・湖・海・溜池・沼田・等 の他に水草を植えた植物堀がある
 空堀  中世城郭に多い 特に山城
 堀切り、横堀、竪堀、畝堀、畝状竪堀、障子堀

設置場所による名称
  内堀
  中堀
  外堀
  惣堀(総堀)
    一般的には外堀を意味するが、城によって外堀の外側の城下町を回り堀をいうこともある
     囲う堀 

作事……建築工事
  作事とは大工仕事が多く作事奉行には大工の棟梁が任命されることもありました。土木工事がはじまると建築工事も同時に進行していくのが普通でした。近世の城では防衛的建築工事よりも居住性の良さが重視されるので作事は早めに起工された。

天守
戦国時代に入ると井楼矢倉が使われその上石火矢を・・放つ
「井楼初見」 応仁2(1468)舟岡山、応仁の乱では京都市内のあちこちで井楼が立った、大井楼と言い高さを競ったふしがある。
日本の城の象徴とされる最も重要な建物で16世紀後半から築城した城のほとんどにこの天守がついています。 始めは御殿の屋根の上に井楼の物見台を乗せたにすぎなかったが信長の安土城で一変した。(1576)「天正4年」

天守の役割
  展望と指令
  最後の拠点 詰の場所
  倉庫 武器庫
  城主の居館
  城主の威厳を示す 外から見れば威厳と美観
   この他に江戸時代の軍学者は天守の十の効用をあげている(天守の十徳)

天守の平面的構成
  独立式天守(単立式)・・ 丸岡城、高知城
  複合式天守・・ 犬山城、彦根城、岡山城。
  連結式天守・ 名古屋、熊本城
  連立式天守・・ 姫路城、伊予松山城
  天守の外観
  望楼型天守
  層塔型天守
  御三階天守(櫓)

殿 舎
寝殿造   古代平安末期頃までの公家住宅,陽・陰の南北の軸として左右対称の「古法」殿舎構成を
       理想とした四神相応の思想。中世に入ると非対称の例が多くなり書院造りと転生されていった。
書院造
   江戸時代初期に完成した住宅建築の様式、武家が開発した住宅様式(当代法)
   接客空間が独立し雁行する殿舎構成がとられている。
   御寝室を中心とする主人の生活空間-数寄屋・イロリの間・書院など茶湯に遊興する
   空間が造られている。

現存する殿舎
   二条城の二の丸御殿
   川越城の本丸御殿
   掛川城の二の丸御殿
   高知城の本丸御殿

櫓(矢倉-屋蔵)
  矢を収納しておく倉庫(武器庫)と弓矢を射る場所から始まった。
  櫓は歴史が古い。弥生時代の吉野ケ里遺跡には物見櫓が建っていた。
  奈良・平安時代の城柵、多賀城には土塁と掘立柱からなる櫓跡が発掘されている。
  近世城郭の櫓は室町時代末期の16世紀中期に出現した、城壁に建つ本格的な建造物。
  天守に比べると小型で簡略化したようなものである。
  城の防備で重要なのは曲輪の隅部である。ここに櫓を上げる(角櫓)

 形による分類・・ 平櫓、二重櫓,三重櫓、多門、(多聞)櫓、天秤櫓
 使用目的による分類・・鉄砲櫓、煙硝櫓、塩櫓、太鼓櫓、月見櫓、?着到櫓、化粧櫓,
                千貫櫓、伏見櫓,艮櫓,巽櫓、乾櫓,外

城 門(虎口)
 城門の正面側に鏡柱と呼ぶ太い主柱をたてる。その上に冠木という太い水平材を渡す、鏡柱の間に内開きの二枚の扉をとりつける。そして鏡柱の転倒防止のため鏡柱の後方に正方形断面の控柱を立て鏡柱を貫で連結する。

城門の種類は基本構造の上に載せるものによって変化する
形による分類
  冠木門,棟門、高麗門,薬医門,櫓門,長屋門、塀重門、埋門、楼門

使用目的による分類
  大手門(追手門)、搦門,不開門,太鼓門、隠門

機能による城門
  枡形虎口・・方形の塁の四辺の二方に出入り口を造ります。城内側を二の門と言い(一般的には櫓門)城外側を一の門として、高麗門を建てるので敵の目に曝されることなく出入りができます。
  馬出し
   虎口前方に小さな郭を築き防衛力を一段と強化した、この虎口を馬出しといいます。騎馬武者が馬に乗ったまま出入りできる防備施設のある虎口。虎口の前方又は後方に一文字土塁を築きここから出入りする。
  
虎口と横矢

   築城の縄張りは曲輪の配置の他地形を補い守りやすくする為に工夫がされています。とくに重要なのは敵が集中してくる出入り口や枡形の配置などです。城の出入り口を虎口といいますが本来は「小さく口をあける」という意味で「小口」と書いたものが次第に虎口となったといわれています
 横矢掛り
  土塁・石垣・濠の屈折の方法で、いかに有効に矢を射るかの工夫がはじまりです。
  塁に凹凸や屈折があれば射撃が直線よりも、自由かつ安全で効果的である。

平城の表現
 平城(平山城)
   濠を掘ってその土を築き、土塁にする。石を積み上げて石垣にする。
   鉢巻石垣・腰巻石垣・・関東地方
   堀や柵を築き平地にして曲輪をつくる。殿舎・天守・櫓-蔵等の建物を築てる。
   濠に橋をかけて門をつくり城とする。

 山城  
   山を削って削平地をつくる。同時に切岸をつくる
   掘った土で土塁をつくる。柵を築いて曲輪をつくる。建築物
    (山小屋程度の建物など建てる。櫓を建てる.空堀(堀切・竪堀}を掘って防禦施設とする。
   虎口を作って、土橋を作り、門とし・城とす。
 参考資料

ビュアル版  城の日本史 編集者 内筒 晶 発行者 角川暦多
歴史群像シリーズ  よみがえる日本の城 編集者 折井邦弘 発行人 中村雅夫
歴史群像名城シリーズ  大坂城 (株)学習研修社 発行人 太田雅男
徹底図鑑 日本の城  著者 中井 功 発行者 富永晴広
日本城郭体系 本巻18巻 編集者 平位 聖 発行者 菅 英志
          別巻 2号 編集者 村井益男
                 編集者 村田修三
広辞苑 編集者  新村 出 発行者 守口良介
城と城下町  見方講座 監修者 伊ヵ崎淑彦 発行者 岩佐健彦
城のつくり方図鑑  著者 三浦正幸 発行者 柳町敬直
学研 漢和大辞典 編 者 藤堂明保 発行人 児山敬一

 当日の講演会会場で、パワーポイントを映しながら説明を受けました
資料の一部を紹介します。講師の川岡氏のご厚意で掲載を許可いただきました。
 
 
 
 
最後までご覧頂き有難うございました!


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