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平成27年度
交野古文化同好会総会・特別講演会
 青年の家 201号室 午後1時30分~
  
26年度実施報告及び会計報告・監査及び会則の一部改正
役員改選、27年度行事予定・予算案ほか


2015.4.11 
総会・講演会  出席者54名
 総会は、村田事務局長の司会・議長で始まり、議案審議に入り、26年度の古文化同好会の行事実施報告については高尾企画部長より、会計報告は梶幹事、会計監査は山下会計監査、そして立花会長より会則の一部改正などが提案され承認されました。
 続いて、2月の幹事会で引き続き会長に互選された立花会長より15名の役員が選出され、27年度行事予定は高尾部長、予算案は梶会計幹事よりそれぞれ提案され承認されました。

 立花会長より、古文化同好会の1年間を振り返り、歴史健康ウォーク・勉強会・バス旅行・文化祭の事業活動など、講師の皆様や参加頂いた会員の皆様のお蔭で大変充実した活動が出来たことに謝意が述べられ、今年も引き続き選任された役員の方々、会員の皆さんの一層のご協力ご支援をいただきながら皆さんと共々、交野古文化同好会をより発展させるよう頑張りたいと決意を述べられた。

 引き続き記念講演会に移り、「河内名所図会と交野」をテーマで河村寧子先生よりご講演を頂戴して、27年度総会・講演会は無事終了致しました。

 特に、今回ご講演頂きました河村先生の大変わかりやすいお話に、参加された多くの皆さんから大好評を頂戴しました。
交野古文化同好会・総会 議題
  1.日時  平成27年4月11日(土)  13:30~
  2.場所  青年の家 201号室

     総会後、特別講演会 演題「河内名所図会と交野」
            講師; 河村寧子氏(関西大学非常勤講師) 
                (大阪市立中央図書館・大阪市史編纂室)

  総会次第
     1) 開会の挨拶
     2) 平成26年度の行事報告
     3) 平成26年度・会計決算報告
     4) 平成26年度・会計監査報告
     5) 会則の一部改正について
     6) 役員改選
     7) 平成27年度・会長挨拶
     8) 平成27年度の事業計画案及び予算案
     9) 閉会の挨拶
 
平成27年度 交野古文化同好会 役員
会長 立花 昇
副会長 奥野 和夫
事務局長 村田 義朗
会計 梶 健治
会計監査 山下 東太郎
  毛利 信二  
企画事業部 部長 高尾 秀司
         副部長 崎山 竜男  
         副部長 木下 忠信  
広報部    部長 伊東征八郎 
地域部    部長  厚主 弘
     私部地区 私部(1) *奥野 和夫(兼)
私部(2) 吉岡 一秋
私部(3) 梶 健治(兼)
     郡津地区 郡津 *巽 憲次郎
幾野 山下 東太郎(兼)
松塚・梅が枝 橘 美緒子
     倉治地区 倉治・神宮寺 *厚主 弘(兼)
     私市地区 私市 *平田 政信
天野ヶ原 高尾 秀司(兼)
森・寺 木村 陸司
     星田地区 星田 *立花 昇(兼)
藤が尾・妙見坂・妙見東 崎山 竜男(兼)
南星台・星田山手 毛利 信二(兼)
 平成27年度 交野古文化同好会上期行事計画(案)

行  事  内  容
4 11(土) *平成27年度総会  議題:平成26年度事業・決算報告、平成27年度事業計画・予算案
 特別講演会 「河内名所図会と交野」講師:河村寧子氏
    (関西大学非常勤講師)
  場所:青年の家 201号室  午後1時30分 ~ 午後4時30分
25(土) *歴史健康ウォーク  ★大坂城夏の陣400年記念ウォーク JR星田駅集合 
   9時~12時解散   案内:平田政信氏
  光林寺~徳川家康陣屋跡~新宮八幡跡・旗掛松 
5 9(土) *歴史健康ウォーク  ★大坂夏の陣400年記念 真田幸村ゆかりのコース 参加費350円
  JR河内磐船駅 8時45分集合  案内:てんのうじ観光ボランティア
 天王寺公園(入場料150円)~茶臼山~一心寺
  ~安居神社~JR天王寺駅12時解散
23(土) *勉強会  ★テーマ 「星田妙見宮の神々」  午前10時~12時 
  講師:平 研氏(交野古文化同好会)  場所・学びの館  
6 13(土) *バスツアー
  雨天決行

 平成の大修理
  完成
  姫路城
  好古園
  県立歴史博物館
 ★世界遺産「姫路城」周辺ツアー  案内:姫路城ボランティアガイド
   募集人員 55名(定員に達し次第締切)   ※弁当持参
   ※参加者が40名に達しない場合は中止
   参加費  会員 5,000円  一般 5,500円  (当日徴収します)
   集合・出発場所 午前9時(時間厳守)  焼肉久太郎駐車場
   ◎参加申込受付は4/11~5/13まで  村田氏電話 892-2326
27(土) *勉強会
 ★テーマ 「河内木綿と機織り教室」  午前10時~12時
   講師:小川 暢子氏(交野市教育委員会)  場所・学びの館  
7 11(土) *歴史健康ウォーク  ★大坂冬の陣400年記念 真田幸村ゆかりのコース 参加費200円
  JR河内磐船駅 8時45分集合  案内:てんのうじ観光ボランティア
  JR玉造駅~三光神社~真田山陸軍墓地~
  誓願寺~近鉄上本町駅 12時解散
25(土) *藁・布ぞうりつくり  ★市民対象  藁・布ぞうりつくり 午前9時~午後3時
   場所 ゆうゆうセンター 1Fロビー  スタッフは午前9時集合
 ※7月18日(土) 藁ぞうり作り講習会 松宝寺公園:午後1時30分
26(日) *無縁墓清掃  ★獅子窟寺の無縁墓の清掃 午前8時30分 王の墓集合
8 1(土) *役員会  ★27年度下期行事検討 午前9時30分~12時  
  青年の家 206号
適宜 *無縁墓清掃  ★かいがけ道・郡南街道の無縁墓の清掃
9 12(土) *歴史健康ウォーク  ★大東市再発見Ⅱ 古堤街道を歩く JR住道駅9時集合
 案内:高尾秀司氏  聖徳太子堂~鴻池新田会所
(入場料250円)~鴻池新田駅12時解散
26(土) *勉強会  ★テーマ 「悲劇の王子・惟喬親王」    午前10時~12時
   講師 寺田 政信氏(交野古文化同好会)   場所 学びの館  
●当該行事計画(案)は4/11の総会で承認後、実施します。 
  参加は自由ですが、会員外の方は資料代200円を負担。  
●各行事に参加される方は、直接会場又は集合場所にお集まりください。
  集合時間が過ぎると開始・出発します。
●歴史健康ウォークは小雨決行。参加される方は交通事故などに十分ご留意ください。
 会としては責任を負いません。
 


立花会長の挨拶


高尾事業企画部長より、行事報告及び事業計画案が提案されました



特別講演会
      演題  「河内名所図会と交野」
        講師; 河村寧子氏
(関西大学非常勤講師) 
            
(大阪市立中央図書館・大阪市史編纂室)
 

 引き続き、特別講演会が高尾部長の司会で開催されました。
 河内名所図会とは

 世界遺産になっている京都や奈良などのお寺や名所・旧跡は国内だけでなく、海外からも多くの人々が訪れます。このような観光のルーツは、江戸時代にさかのぼります。

 今では、いろいろなガイドブックやインターネットを使って、事前にその土地の情報を集めることができますが、江戸時代では「名所図会」と呼ばれる全国各地の名所・旧跡を集めた書物が観光ガイドブックの役割を果たしました。

 この書物には挿絵も多くあり、当時の人々が河内の名所を訪ねるときに使ったのが、享和元年(一八〇一年)に刊行された「河内名所図会」(文章・秋里籬島(あきさとりとう)、挿絵・丹羽桃渓(にわとうけい))でした。   
  (八尾市役所WEBより参照)
  名所図会(めいしょずえ)は、江戸時代末期に刊行された江戸・畿内をはじめとして諸国の名所旧跡・景勝地の由緒来歴や各地の交通事情を記し、写実的な風景画を多数添えた通俗地誌。

 名所図会に先立つ類似物として名所記と呼ばれる刊行物があるが、名所記が文芸的・物語的な叙述に特徴があるのに対し、名所図会は事物の来歴などを客観的に記す点に特徴がある。名所記に比べて挿絵の比重が高く、浮画の影響もあってか鳥瞰図風の写生画をしばしば用いる。名所図会の挿絵は、地理的説明の機能を果たすだけでなく、鑑賞用途にも堪えるものである。また、編集においても、地域別・方面別の構成を取るなどの工夫が見られ、近世における巡礼の盛行による需要に応じて、名所案内としての実用性を備えている。

 こうした名所図会の最初の例は安永9年(1780年)刊の秋里籬島著・竹原春朝画の『京名所図会』(6巻11冊)を始まりとされる。『京名所図会』は前述のような特徴を備えて、見て楽しむことに重きを置き、通俗に徹しながらも詩歌俳句の類をもとりいれて興味深いものとしたために、好評を博した。版元の吉野家為八は同じ著者・画家による名所図会を引き続き刊行し、それらも同じく成功を収めたことに刺激を受け、他の版元も名所図会の出版に乗り出した。

 名所図会の刊行は寛政年間から文化年間初期にかけてと、天保年間以降の2つの時期にピークが見られ、これらふたつの時期の間の文化・文政年間には、江戸幕府の出版等政策の関係からか、再版が主となり新刊は少ない傾向が見られる。
         (Wikipediaより参照)
 

講師; 河村寧子氏(関西大学非常勤講師)
 河村寧子先生より、河内名所図会と交野のかかわりについて、沢山の資料と
参考画像をパワーポイントで映写しながらわかりやすく解説いただきました。

今回のご講演の内容は、『名所図会』をはじめとする「地誌類」には、
郷土愛ともいえる地域意識の反映が見られ、交野の地域意識はどのような部分から
見つけることができるのか。「交野の名所に地域の人が関わる時期は?」
また、「そのきっかけは?」について、大変わかりやすくお話を頂きました。
 
 
 

「河内名所図会と交野」 レジメ集
河村寧子氏(関西大学非常勤講師)
 <はじめに>
 『名所図会』をはじめとする「地誌類」には、郷土愛ともいえる地域意識の反映が見られます。それでは、交野の地域意識はどのような部分から見つけることができるのでしょうか。「交野の名所に地域の人が関わる時期は?」また、「そのきっかけは?」といった問いにつながるお話をしたいと思います。

I.名所図会について
I-1.名所図会の誕生
 ○名所図会とは
  江戸後期の地誌風の読み物の総称。各地の名所旧跡の沿革などを解説し、これに風景画を添える。寛政から天保(1789~1843)にかけて約70種が刊行されている。
                        (参考『目本国語大辞典』)

○名所関係書籍の分類
①地誌A 〔名所記〕 ・
 仮名草子の一種類に位置付けられ、物語風の叙述と挿絵をともなったもの。
  例)『京童』明暦4年(1658)、『芦分船』延宝3年(1675)、『河内鑑名所記』延宝7牛(1679)
②地誌B 〔本格的地誌〕 官撰や私撰による体系的に編纂された本格的な地誌。
  例)F河内志」
③地誌C 〔名鑑的地誌〕 諸役人や諸職諸商などの所付けをした名鑑的な地誌。
  例)『難波雀』延宝7年(1679)
④地誌D 〔名所図会〕
  詳細な絵とともに、名所の所在・由緒などを説明し紹介したもの。
⑤(名所)絵本  絵を主体とし、狂歌などを添え名所の風景を見せた書物。
⑥名所図  名所旧跡などの情報を描いた地図。一枚摺りのものが多い。

○都名所図会の誕生
 『都名所図会』安永9年(1780)刊行。秋里籬島著、竹原春朝斎の画によって
  京都の板元吉野屋為ハから刊行された名所図会ものの嚆矢(こうし)。

 滝沢馬琴著『異聞雑損』の「吉野屋為八」より
 [大意]
 『都名所図会』は当初売れなかったが、あるとき大坂城代であった小浜藩の酒井侯が江戸参向の折、土産として『都名所図会』10数部を携えた。それ以来売れるようになり、その翌年には1ヵ年の製本が4000部にも達し、あまりに求める人が多かったので製本する暇がなく、本に表紙と綴じ糸を添えて売り渡すほどであった。

・名所図会の特徴
 ・寺社・旧跡・地名・景勝地などの由緒来歴や街道・宿駅・河川などの案内
  をわかりやすく解説する。
 ・実景を描写する挿絵が多数加えられている。
 ・古歌や同時代の俳句・狂歌などを加え、歌の「名所(などころ)」を示す。
 ・名所の本来的な概念である歌の「名所」という範疇を越えて、寺社や旧跡、
  町場のにぎわいまでを紹介する。
 ・『都名所図会』が人気を得た結果、それにならった名所図会が多数刊行され、
  後の地誌に影響を与えた。当時のベストセラー。

・江戸時代の川柳に詠まれた名所図会
  ほう杖で路金入らすの名所図絵(柳多留・108)
  頬杖で行脚の出来る名所図絵 (柳多留・137)
    長友千代治『江戸時代の書物と読書』(東京堂出版、2001年)より


【表1】 秋里籬島が作成した名所図会の一覧
   書名                 刊行年       刊行者
『都名所図会』            安永9年(1780)   京都古野家為ハ
『拾遺都名所図会』         天明7年(1787)      同上
『大和名所図会』          寛政3年(1791)    京都小川多左衛門
『住吉名勝図会』          寛政6年(1794)    江戸西柳原六ら
『和泉名所図会』          寛政8年(1796)    京都小川多左衛門ら
『東海道名所図会』         寛政9年(1797)     京都田中庄兵衛ら
『摂津名所図会』          寛政8・10年      京都小川多左衛門ら
『河内名所図会』          享和元年(1801)   京都出雲寺文次郎ら

I-2.名所の観光地化
○名所とは何か?
  現代の名所といえば → 観光名所 東京スカイツリー、大阪城など
 名所の本来的な意味
   和歌の名所・歌枕…嵐山(紅葉)、吉野山(桜)、難波潟(芦)

○交野
 またや見ん交野の御野の桜がり花の雪ちる春の曙   藤原俊成
                     新古今泉巻二、春下
○名所の変化
  江戸時代には、和歌に詠む歌枕から訪れるべき場所へと変化する。
  名所見物が盛んにおこなわれる。(旅の流行・移動・行動する文化)

史料1 下総国関宿藩の武士・池田正樹『難波噺』(『随筆百花苑』第14巻)
  今、世のなかをわたりくらべて知るといふも、古歌に似たるやうなれども、
  夫は昔し心ある人の詠とかや。予ハ故郷を別れて遠く来たりしかひに、
  せめてみてのミや人にかたらんと思ふ。

Ⅱ 河内の名所と地域意識 一 歌枕から『河内往来』まで-

Ⅱ-1.名所関係書籍の変遷
 ①『河内鑑名所記』 延宝7年(1679)成立 三田浄久著 6巻6冊の木版本
 河内国の地誌の最初のもの。著者は河内国志紀郡柏原村の三田浄久。各地域の
 名所旧跡・寺社を掲載。それぞれの名所にちなんだ和歌、狂歌、俳句を多く載せる。
 文芸的な性格が強い「名所記」。⇒ 地誌Aタイプ

   参照 『河内鑑名所記』の文人たち 松原市役所HP

 ②『河内志』 (『日本與地通史畿内部』 通称『五畿内志』の一つ)
 享保20 ・21 年(1735 ・36)刊行。関祖衡纂輯とするが、実際は並河誠所による編纂。
 江戸幕府による最初の官撰地誌とされる。正式な名称は『日本輿地通志畿内部』だが、
 一般的には『五畿内志』と称される。山城国・大和国・河内国・和泉国・摂津国の地誌で、
 それぞれが「山城志」「河内志」などと呼ばれている。その編集に際し、編者らは各地を
 巡歴してその地理を見極め、古文書・古記録や伝承・歌謡を収集し、それら史料を根拠に
 記述を進めた。実証的な試みの地誌。⇒ 地誌Bタイプ

③『河内名所図会』 享和元年(1801)刊行 秋里籬島・丹羽挑溪画 6巻6冊
 秋里籬島による名所図会類の一つ。地域の古歌や先行する地誌の情報の紹介とともに、
 名所である寺社や伝承を絵に表して掲載していることが特徴、当時の地域の状況を示す
 ものとして、現在でも資料としてよく使用される。掲載項目数約680点。⇒ 地誌Dタイプ

  参照  『河内名所図会』 6巻の6  早稲田大学図書館公開 PDF
        (讃良郡、茨田郡、交野郡編)


④『河内往来』
 天保6年(1835) 河内国交野郡茄子作村の堀月下の編集。「往来」の名前が示すように
 児童向けの教科書。二段組みの紙面で、下段に本文が、上段に各地の住民による俳諧、
 和歌、狂歌を季節ごとに並べる。 ⇒ 往来物

 <参照> 摂津名所図会大成 (全二巻)
 著者の暁鐘成は幕末浪華の人。原本は晩年の鐘成が心血をそそいで執筆したもので、挿入の挿絵もほとんど完成していたが、鐘成の不慮の死によって刊行に至らず、その自筆原稿本は河内屋に秘蔵されていた。寛政年間刊行の『摂津名所図会』は摂津十二群全域にわたるが、本書は現在の大阪旧市域と周辺に限り、その記述は詳しい。名所旧蹟から堂島米相場市、道修町薬種商、天満疏菜市、心斎橋の書肆、道頓堀芝居側をはじめ、庶民の暮らしなども取り上げ、幕末の大阪の生活史を明らかにする。


Ⅱ-2. 名所関係書籍の制作背景

 ①『河内鑑名所記』 延宝7年(1679)成立 三田浄久著
 【表2】『河内鑑名所記』への投稿者人数地域別
     地域   人数        地域    人数
     山城    2        天王寺    3
     大和    69       平野庄     6
     河内   118       武州(江戸)  13
     和泉    7        伊勢      1
     摂津(大坂) 34       備後      1
     天満     4        豊後     1
  ○河内の参加者のうちほとんどが中河内・南河内の人  交野は1名

交野 蒲剱(ホケン?)
 ○枚方 丸からてちとひらかたの月見かな
 ○交野 雉も住や我もかたのいまけんけん

 ②『河内志』 享保20 ・21 年(1735 ・36) 並河誠所編纂
 ・並河誠所     ・
   江戸時代中期の儒学者。若くして伊藤仁斎に学び、掛川藩、川越藩の藩儒を経て
   江戸でおしえる。友人開祖衡の遺志を継いで『五畿内志』を刊行する。
 ○『五畿内志』(『河内志』を合む)編纂のための調査過程で、式内社の考証を行い、
  現地踏査の上で、畿内の全式内社を当時現存した神社に比定した。⇒ 式内社の再注目

 ・式内社
  平安時代の法令書『延喜式』の「神名式」(『延喜式神名帳』)に記載された、国家的崇敬
  の対象となった神社の総称。
 ・並河誠所の思想・式内社に対する考え

 ・徳川吉宗による文化政策
  ◎享保7年(1722)から古文献の調査・収集を行う。
  ◎殊の外『延喜式』を好んで、その古法に従って調度を誂えたり、色彩の復元を行う。
  → 幕府の中にも復古的な指向があった。

 ○『河内鑑名所記』から『河内志』への変化
 『河内鑑名所記』
   星田妙現(妙見)小松寺の観音、百済王の宮、-の宮
 『河内志』神廟
  式内社…片野神社(一宮)、久須々美神社
  式外社…二宮、三宮、百済王祠廟、機物神祠、妙見神祠、ハ幡祠

③『河内名所図会』 享和元年(1801)刊行  秋里籬島著
・秋里籬島と覚峰阿闍梨
  秋里籬島が『河内名所図会』を編纂するにあたり、覚峰阿闍梨が協力。
  →地域に名所図会の編纂協力者がいる。
・覚峰
 真言宗の僧侶。宝暦年聞(1751~1764)に河内国金剛輸寺(現羽曳野市)を再興した。
 大坂の人で、国学の造詣ふかく、河内を中心とする古代史を研究レ河内の古跡調査でも
 知られた。

史料2 『河内名所図会』 巻之三
 十六山金剛輪寺の項目
  当山現住阿闇梨覚峰師、諱は真如金剛、号は四々山人、或は麦飯仙といふ。(中略)
  常に和歌を詠じ、国史に耽る。(中略)今般此書を助力し給ふ事多し、まづは河内州の
  国学の識者なり

史料3 書状 享和元年(1801)九月朔日  秋里籬島から金剛覚峰尊師宛て
  然者河内名所大畧彫■も出来申候、重陽後早々二相出し可申候、大坂之板元只今仕入二
  相かゝり居候
  → 河内名所(『河内名所図会』)の木版の彫刻もほとんどできました。重陽(9月9目)後、
  早々に出版します。大阪の出版社がただいま(書籍の)仕入れにかかっております。

④『河内往来』 天保6年(1835) 交野郡茄子作村 堀月下著、(倉治)加地士龍書

 【表3】河内往来の投稿者一覧 (参考文献の藪田論文参照)
     郡名    人数       郡名     人数
    茨田     10         丹北      2
    交野     29         丹南      4
    讃良     5          八上      0
    河内     18         志紀      4
    若江     5         安宿部     1
    渋川     3         古市       5
    高安     4         石川       12
    大県     2         錦部       0
      *所属不明が9名いる。

○交野の文芸  *『交野市史』 (交野町略史復刻編、1981年)より
 郡津…古光(谷三郎兵衛)、一調、花ト、指月、其水、美稲
 倉治‥・孤雀(加地友三郎)、扇方、東岳、不誠
 星田…白馬、魯秋

Ⅲ。交野の名所

○貝磨益軒が見た交野
  貝原益軒『南遊紀行』
   儒学者・本草学者。元禄2年(1689)に山城、河内、和泉、紀伊、大和の五州を
   旅した紀行文。

史料4 別紙参照
 [元禄2年2月10日]
  京都から交野辺りへ→茄子作付→私市  獅子窟山、岩船をみるために立ち寄る。
  私市村の二左衛門宅に宿泊。
 [2月11日]
  「獅子の窟にのぼる」獅子窟寺、「是より岩船へゆく」岩船
 [2月23日]
  天の川の南の岸に宿かりぬ。在原業平の[かりくらしたなげたつめに宿からん天の川原に
  われは来にけり]とよめる歌にかなへりとおもひ出て、最興ありき。あくれば二三日、つとに
  出で、天の川を越えて、其東北に禁野あり。名有所也。(意訳:天照大御神にお供えする
  鳥を取った場所で、天子の狩場であるので)人のかりする事を禁ぜし故、禁野と名づく。
  「またやみんかたののみのの桜がり花の雪ちる春の明ぼの」と俊成(藤原)の詠ざられしも
  此所なれば、折にふれておもひ出らる。(略)渚院観音寺あり。
  古は桜おほかりしと云。業平の歌に、世の中にたえてさくらのなかりせば(春の心はのどけ
  からまし)とよめるも此所なり。

   『東路記・己巳紀行・西遊記』(新日本古典文学大系98、岩波書店1991年)、
   『枚方市史』(枚方市役所発行、1951年)より抜粋

『河内往来』
 (前略)北に星田妙見山、私市村に獅子窟寺、罪も報も茄子作に本尊掛松あり。
 私部村、無量光寺、光通寺。続く倉治の里近み、遥見上る交野山。麓に響く
 源氏か瀧、岩打浪はさなからに、白旗の靡かとあやしまる、津田の細道分登り、
 三の宮居を遥拝し、尊延寺村池坊は(後略)

【参考文献】
  白井繁太郎著『阿闇梨覚蜂の伝』大阪府立図書館、1958年
  『河内名所図会』(柳原書店、1975年)
  『河内鑑名所記』上方藝文叢刊3(上方藝文叢刊刊行会、1980年)
  『交野市史』(交野町略史復刻編、1981年)
  藪田貫〈資料紹介〉河内往来ー河内大の郷土認識の伝承-
    (『大阪狭山市史紀要』第1号、1995年)
  藪田貫「秋里籬島の覚峰阿闇梨宛て書簡」(大阪年遺産学研究叢書別集7『名所図会で
  めぐる大阪一摂津Ⅱ・河内・和泉-』関西大学大阪年遺産研究センター、2015年)
 パワーポイントで映写された画像集
 

獅子窟寺

『河内鑑名所記』 延宝7年(1679)成立 三田浄久著 6巻6冊の木版本
 河内国の地誌の最初のもの。著者は河内国志紀郡柏原村の三田浄久。各地域の
 名所旧跡・寺社を掲載。それぞれの名所にちなんだ和歌、狂歌、俳句を多く載せる。
 文芸的な性格が強い「名所記」。⇒ 地誌Aタイプ
 

地誌C〔名鑑的地誌〕 諸役人や諸職諸商などの所付けをした名鑑的な地誌。
  例)『難波雀』延宝7年(1679)
 

『河内志』 (『日本與地通史畿内部』通称『五畿内志』の一つ)
 享保20 ・21 年(1735 ・36)刊行。関祖衡纂輯とするが、実際は並河誠所による編纂。
 江戸幕府による最初の官撰地誌とされる。正式な名称は『日本輿地通志畿内部』だが、
 一般的には『五畿内志』と称される。

 

摂津名所図会
『摂津名所図会』 寛政8・10年 京都小川多左衛門ら
 
 
 

伊勢物語 渚の院
 

伊勢物語 在原業平
 

大坂 天満付近の風景図
 
 
 
 

河内志 享保20・21年(1735・36)刊行
 

 『河内鑑名所記』
   星田妙現(妙見)小松寺の観音、百済王の宮、-の宮

 

鴻尾山  源氏の滝
 

獅子窟寺
 

『河内鑑名所記』への投稿者人数地域別
 

『河内鑑名所記』 延宝7年(1679)成立 三田浄久著
 『河内鑑名所記』への投稿者人数地域別


交野 蒲剱(ホケン?)
 ○枚方 丸からてちとひらかたの月見かな
 ○交野 雉も住や我もかたのいまけんけん
 

天保6年(1835) 河内国交野郡茄子作村の堀月下の編集。「往来」の名前が示すように
 児童向けの教科書。二段組みの紙面で、下段に本文が、上段に各地の住民による俳諧、
 和歌、狂歌を季節ごとに並べる。 ⇒ 往来物

 
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