HPのTOPページへ戻る

平成27年5月定例勉強会

星田妙見宮の神々と里人の祈り

  講師:平 研氏 (交野古文化同好会)

青年の家・学びの館 午前10時~12時
 45名の参加
 2015.5.23(土)午前10時、5月定例勉強会に45名(会員33名)の方々が参加されました。

 高尾部長の司会で始まり、立花会長の挨拶の後、講師の平研氏から「星田妙見宮の神々と里人の祈り」をテーマで詳しくお話しいただきました。詳細な研究資料とプロジェクターによる映像を駆使してたっぷりとお話し頂きました。

(講演の概要)

 <星田妙見宮の由緒  星田妙見宮の御祭神>
   1.妙見信仰とは=北辰妙見菩薩信仰
   2.星田妙見宮の神仏
   3.祭り
   4.里人の祈り

 平さんには今年の正月の初歩きで、「星田妙見宮の神々」についてたっぷりとご案内頂き、今回更に、星田妙見宮の神々に加えて、里人の祈りなど大変分かり易く解説頂きました。

  初歩き、星田妙見宮の神々の案内風景はこちらを参照ください。

 HPの掲載に当たり、講師のご厚意で当日配布されたレジメなどを提供頂きましたこと、
  記して感謝申し上げます。


講師:平 研氏 (交野古文化同好会)


田神社・星田妙見宮  宮司 佐々木 久裕氏のご挨拶


佐々木宮司様には、下期の勉強会でご講演を頂く予定です!
勉強会 風景
 

当日、パワーポイントで上映されたレジメ
「星田妙見宮の神々と
里人の祈り」
 
星田妙見宮の由緒  (配布資料の星田妙見宮由緒書より)
 当社の縁起によりますと、平安時代、嵯峨天皇の弘仁年間(810~823)に、弘法大師が交野へ来られた折、獅子窟寺吉祥院の獅子の窟に入り、仏眼仏 母尊の秘法を唱えられると、天上より七曜の星(北斗七星)が降り、その3か所に分かれて地上に落ちたと云います。この時よりここに「三光清岩正身の妙見」として、祀られるようになったと云います。現在もこの伝説は当地に残っており、・・・・(八丁三所)。

星田妙見宮の御祭神
  「本座」天之御中主大神・高皇見産霊大神・神皇産霊大神
     (仏教ー北辰妙見大菩薩、道教・陰陽道では太上神仙鎮宅霊符神)
  「鎮宅社」 太上神仙鎮宅霊符神
  「三宝荒神社」 三宝荒神
  「豊臣稲荷社」 保食大神
  「龍神者」 金色竜王
  「下社稲荷社」 倉稲魂大神
  「祖霊社」歴代宮司・社守の御霊
  その他、庚申様・お地蔵様

 
 
 1、妙見信仰とは=北辰妙見菩薩信仰
*北辰(北極星)信仰=古代バビロニアの遊牧民に始まり、中国で道教と仏教に習合した。
*道教=(中国3大宗教の一つ-仏教、儒教、道教)修行して不老長寿を目指す、究極は仙人)
*道教の北辰信仰=北極星(北辰)は宇宙のすべてを支配する最高神(天帝であり、その乗り物の北斗七星に人々の行状を監視させ、その生死、禍福を支配する。
「北辰、北斗への祈りは、百邪を除き、災厄を逃れ、福がもたらされ、長生きできる」

*仏教の北辰信仰=北辰は仏教に入って菩薩と習合して北辰妙見菩薩となった。「吾は北辰菩薩、名付けて妙見という。…吾を祀らば護国鎮守、除災招福・長寿延命・風雨順調・五穀豊穣・人民安泰にして、王は徳を讃えられん」(七仏所説神呪経―5・6世紀中国)―
仏教とともに日本に伝来し、主に天台宗(→日蓮宗)、真言宗の密教に取り入れられた。

*神道との習合=宇宙創成・最高の神とする天御中主之神(日本神話で最初に現れた神-神道)と習合した。
*星田妙見宮にはその北辰、北斗が「鎮宅霊符神」として祀られている。
 

鎮宅霊符神=北辰、北斗を神格化した神として妙見宮での本座
(明治の神仏分離では、一時俳除されたが、のち復帰され、広く信仰された)
(家内安全・招福の霊符=お札―72種類がある)
 
 河内名所図会
妙見神祠妙見山にあり。神体巨石三箇、鼎のごとく峙ちて、丘のごとし。
前に石の鳥井、拝殿、玉垣、石段等あり。
土人、織姫石とも妙見石とも呼ぶ。この神祠の旧名小松明神、灌頂録に見えたり。
妙見尊は、神道家には天之御中主尊と称し、陰陽家には北辰星と云い、
日蓮宗徒には妙見菩薩と仰ぎて、近年おほいに奉信す
 
 2、星田妙見宮の神仏
星田妙見宮には神道、仏教などの宗派を超えて、多くの神仏が祀られている。

2-1、磐座、降星(妙見石)、織女石
 古代磐座(古神道)→弘法伝説(降星―妙見石)→七夕(織女石)

2-2、鎮宅霊符社(道教→陰陽道密教)北辰・北斗を祀る

2-3、三宝荒神社(真言密教)
 荒神=日本古来の荒神{災いをもたらす神、密教に取り入れられて三宝(仏、法、僧)を護る守護神となった}後に氏族、地域、屋敷、竈を守る神へと伸展



2-5、豊臣稲荷(この森での別格の存在) 保食大神
稲荷社=総本社の伏見稲荷は元もと秦氏の氏神
稲荷信仰=豊穣、商売繁盛を主とし、万能の霊験を持つ神として、神社、寺院を問わず、全国に分祀されて、広く信仰されている。(食物、豊穣、商売繁盛、
生産増強、屋敷の安泰を齎す神=現世での物的利益が大きい)

2-7、妙見稲荷(下社稲荷) 倉稲魂大神
2-6、白玉(様)稲荷  宇迦之御魂神(=女神-ここでは女の子の守り神、良縁

稲荷三社(同一神)
ここに万能の霊験を持つ稲荷が3社も祀られていることは、里人の間でいかに稲荷信仰が厚く深く広がっていたかが思われる。そしてその祈りは、多様に祈
られていることも窺える。



2-7白髭大明神(豊臣稲荷の守護?)
石碑には、豊臣大明神 春日大善神 豊川茶枳尼真天(豊川稲荷) 常富大明神 (南無妙法蓮華経)
と刻まれている。
  (日蓮宗の稲荷社と判る)  (豊臣稲荷の守護神として祀られている?)
茶枳尼天=ヒンズー教の鬼女
 釈迦に諭されて仏教を守る神となった。(銀狐に乗っている)



2-7、青龍社 青龍は東方を護る(四神―道教)
2-8、豊正龍王社(神道)
2-9、豊玉龍王社(神道)
 日本神話豊玉姫(山幸彦の妃)=水霊信仰と結びついて降雨の神となった(安産の神でもある)

インド、中国での龍は、日本に伝わって、日本古来の水神(ヘビ)と習合して、水を司る竜神=竜王社(農耕、豊穣、雨乞いの神)となって日本各地で祀られている。ここでは盛大に雨乞いが祈られたであろう。



2-10、金色竜王社 
 竜王は水の神、滝の傍に祀られているのは、ここでも雨乞いの祈りがなされたものと思われる。(健康、金運も)

2-11、登龍の滝(真言密教)
 滝の水がまだ豊富であったとき、この滝に打たれて祈る人の姿があった。

2-12、不動明王(真言密教)
 密教では滝に打たれて祈る行場がある。その行場には、不動明王(密教特有の仏、大日如来の化身)が立つ。密教、修業に仇なす悪魔を撃破する剣、外道に進もうとするものを内道に引き戻す羂索を持つ。現在は厄除け、交通安全にも特効ありとされている。



祖霊社の鳥居の域内に神道、道教、仏教の堂社が同居

2-13、庚申社  道教の三尸説から庚申の夜(年6回)に集団で会合して眠らずに過ごした(庚申社=青面金剛(仏)・猿田彦(神)を祀る)。
2-14、祖霊社
 神社に寄与した神官・氏子などの祖霊を合祀した社。
2-15、延命地蔵尊
 新生児を守る。若死、短命を免れる(昔、子供多死)



2-16、うすさま明王(古代インドの神密教)
 烈火で不浄を清浄にする。
(便所は悪霊の出入り口)便所の神 トイレにうすさま明王の像(お札)を安置して、トイレの掃除をよくする。
魔除け、金運がよくなる。


 七星めぐり
北斗七星と如意輪観音とが習合した七星如意輪観音像が最近、新たに参詣の通路に沿って祀られた。
 
 2-17、七星如意輪観音(道教+真言密教)
生まれた年により、その人の本名星、元辰星が決まる。その星に応じて、性格、才能などが運命づけられ、生涯守られる。(本名星=先天的な運命:一生の寿命、元辰星=後天的な運命:一生の貧富、栄枯盛衰を司る)
本名星と元辰星に祈れば、星と融合した如意輪観音の霊験とが相乗効果をもたらし霊験は倍増する。

如意輪観音=変化観音(六観音)の一尊、
6本の手の中に、如意宝珠(すべての願いをかなえる)、法輪(煩悩を破壊する)を持つ。
*一切の願いを満たす。
*財宝を富ませ、福徳知恵の資福を増加させ、苦悩する衆生を救う。
 
 2-17、七星如意輪観音
  本名星(先天的な運命を司る)は男女共通
  元辰星(後天的な運命を司る)は男女異なる
   (本名星、元辰星の双方を拝む必要)
  七星の像はそれぞれに如意輪観音像である

 2-17-1、文曲星 (もんこくじょう) 本名星=卯、酉 元辰星=男―寅、申 女―辰、戌
 2-17-2、巨門星 (こもんじょう) 本名星=丑、亥  元辰星=男―辰、午 女―午、申
 2-17-3、禄存星 (ろくぞんじょう) 本名星=寅、戌 元辰星=男―巳、酉 女―卯、未
 2-17-4、貧狼星 (とんろうしょう) 本名星=子 元辰星=男―未 女―巳
 2-17-5、廉貞星 (れんじょうじょう) 本名星=辰、申 元辰星=男―卯、亥 女―丑、酉 
 2-17-6、武曲星 (むこくじょう) 本名星=巳、未 元辰星=男―子、戌 女―子、寅
 2-17-7、破軍星 (はぐんじょう) 本名星=午 元辰星=男―丑 女―亥
 
 
 
2-18、その他の拝所
 2-18-1、親子杉(三又スギ) しめ縄を張り、お祈りすれば、神はこの親子杉に降りてきて、祈りを聞いてくれる(家内の幸福、子宝)(古神道)
 2-18-2、大杉 神木(杉の大木)=この鎮守の森を代表する木→この森での神の依り代(神格を与えられている)(古神道)



 2-18-3、お百度石  切実な祈りに「百日参り」があり、それを一日で済ませるために、お百度石を百回往復してお詣りする(神社、寺院)。
ここには、石段下の延命地蔵尊前と最上の拝殿前の2か所にある。)多くの人がお百度を踏んだ)
(祈りの対応神は?)(この森のすべての神?)  民間信仰


2-19、お札の神々
 諸天善神
法華経を信じて修業に励むものを守護し、民衆や、国土を守る神=大梵天王、大日天王、大月天王、大明星天王<天照大神、八幡大菩薩、他の諸々の神をも含む>-(立正安国論―日蓮)から

火産霊大神
 -日本書紀=イザナギ、イザナミが生んだ最後の神
(火結神-ほむすびのかみ)=火の神、鍛冶の神=火伏せの神として信仰(秋葉さん、愛宕さんなどに祀られている)

土公神
(ドクシン・ドコウシン)(陰陽道の神)
土を司る土地神―季節によって移る=春=かまど、夏=門、秋=井戸、 冬=庭 その季節に其処の土を動かすと崇りがある。 
 
 3、祭り
収穫、健康、幸運などの神への感謝と今後の加護を祈る行事を地域で行う。
賑やかに盛大に行うことが、神への重要な奉仕とされる。
3-1、歳旦祭(1月1日) 年の初めに1年の幸を祈る
3-2、星祭り(2月8日) 個人個人の本命星、元辰星を祈り、災いを除き、長寿、幸運を祈る



3-3、稲荷ふいご祭り(5月20日) 稲荷神は火を扱う人たち(刀、農機具の鍛冶屋、風呂屋など)の守護神でもある。豊作、地域と家内の安泰を祈る。(火は生活を支える基盤)

3-4、七夕祭り(7月7日) 織女石にちなんで七夕祭りが盛大に行われるようになった。
 七夕への祈り=技巧上達、良縁・恋愛成就、夫婦円満がかなえられるとして人気。



3-5、星降り祭(7月23日) 弘法伝説の星が降ったという7月23日に祭る。(道教・密教)(護摩を焚いて星の霊力に祈る)
*護摩焚き(密教の祈り)
息災法=地震、火事、雷、台風などの災害がないように
増益法=利益や幸福を求める
降伏法=魔物や怨敵を調伏、折伏
敬愛法=和合、親睦を図るため
(神官は祝詞と般若心経)

3-6、地蔵祭り(8月24日) 地蔵盆(こどもと地域の守りとしての地蔵の祭り)ここには延命地蔵の名で祀られている。



3-7、祖霊祭(9月23日) 妙見宮に関係の深かった人、氏子、戦没者たちの慰霊を祀る。(神道)
3-8、年越し大祓(12月31日) 新年を迎えるために、身に積もった穢れを落とし、心身を清める(除夜の祈り)(神道)
 


祭り(補)―星田妙見と七夕祭り
七夕祭り(鳥居前)
 弘法降星伝説と七夕伝説を融合させて、ここでの最大の祭りとして盛大に行われている。(磐座 降星石 織姫石)

大祓い(茅の輪くぐり)
茅(カヤ)の旺盛な生命力が神秘的な除災力を有するとして、無病息災を祈る。普通は6月末に行われるが、ここでは七夕祭りと組んで行われている。


 万葉の七夕歌碑
 鳥居前の七夕歌碑

織女し船乗りすらします鏡 清き月夜に雲立ち渡る 大伴家持

 織姫を迎えに船を出す牽牛の歌碑は観音山にあるが、星田妙見の織姫とは設置位置としては対応していない(ともに天野川左岸) 星田妙見の織姫に対応する牽牛は天田神社とされるが、天田神社には牽牛の碑はない

観音山に建てられた牽牛像と歌碑と牛石

 ひこぼしのつまむかえぶねこぎいづらし あまのかわらにきりのたてるは  (山上憶良)
 星田妙見の歌碑(織女)とは設置位置としては対応しない-共に天野川左岸にある(この歌碑を天田の宮にも)
 
 
4、里人の祈り-個人
 鳥居の前で
全体への祈り=それぞれに霊験が異なるこの森の神々に一括して手を合わせる人。
個々の神々の前で
経路に沿って祀られている神々すべてに頭を下げていく人。

参拝する人たち
拝殿前で本尊に参拝する人
鎮宅霊符神・三宝荒神に参拝する人
(拝殿前で参拝後ここにきて参拝)参拝する人たち 
 
 
 
3、里人の祈り
1)、神の存在
この多くの神々は、自分の意志でここに鎮座したわけではない。里人の思いが、その神をここに鎮座してもらった。(時代を重ねて多くの神が鎮座することになった。

2)、里人の思いと祈り
 (1)豊作、天候(雨乞い)、家内平穏、商売繁盛、病気平癒、結婚、出産、安全、健康、勝利、成功、合格、学業、成長、幸運、供養、慰霊等に願いを叶えてくれる神をこの森に勧請して祈った―多神教の懐の広さ、救いの広さ、深さ。

 (2)、誰のために
 自分のために、家族のために、人のために、地域のために、国のために、世界のために、

(3)、祭り=感謝と祈願(集団で盛大に-神への認知のデモンストレーション)
多様な神々が鎮座することになったこの森では、里人の多様の祈りが、集団で、個人で、遥かな年代を重ねて厚く、深く祈られて来たことが窺い知れた。
平成28年にはその集大成の、鎮座1200年祭がおこなわれる。

 
 
 
最後までご覧いただきまして有難うございます。

交野古文化同好会のTOPへ

HPのTOPページへ戻る