室生寺
深山と清流に恵まれた室生寺は、都を遠く離れた静寂郷にあるとともに、そこは平安初期の美しい堂塔と特色のある数々の仏像等の名宝を伝える仏教美術の聖地として知られる。
この地は元来、火山帯に属し、周囲の山々は太古の外輪山だともいわれる。そのため、天然の樹林に覆われた「精進峰」を主峰とした重なる山々からはいくつかの渓流が室生川に注ぎ、至るところに岩窟をはじめ奇岩・断崖が多い。これが古来から山と水にかかわる信仰の聖地として崇められてきた室生山の自然環境である。
寺伝では、天武天皇の勅願により白鳳9年(670)に役小角によって創建され、のち弘法太子により真言宗の三大道場との一つとして修営されたという。
しかし、古く確かなところでは、天平時代に後半の宝亀年中(770〜780)にまで遡り、当時の皇太子(のちの桓武天皇)の病気平癒のために、この霊山で浄行僧5人が延寿法を祈願したことがそもそも草創のきっかけであった。直後、興福寺の大僧都賢憬が朝廷の仰せにより国家のために室生山寺を創建するところになった。その後平安時代の始めに、興福寺の僧で賢憬の弟子の修円が入山し、いまに残る五重塔をはじめ伽藍の造営を完成させた。
また室生寺は、修円開創以来、女性にも開かれた真言密教の寺院として広く信仰され、鎌倉時代以降からは、特に「女人高野」と別称されて名高い。
五重塔(天平時代・国宝)
総高16.7mと、屋外に立つ五重塔では最小のもの。勾配がゆるく軒の出の深い檜皮葺の屋根は、朱塗りの柱や白壁とこころ良い対照を保ちつつ、深い杉木立に可憐な姿を織りなすこの塔は、平安時代初期の建立と言われてきたが、屋根の檜皮以外は天平時代の塔とほとんど変わる所がなく、室生山中最古の建築である。この塔は頂上の相輪が珍しく、九輪の上には普通ならば水煙であるのに、これは宝瓶を載せて宝鐸を吊りめぐらして天蓋を作ってあることなど、他に類がない塔である。
高さ16.1m、平面が方2.4m。各重は方三間、三手先組物の軒廻りに、二重以上には高欄がつく。桧皮葺きの屋根は勾配が少なく、また総幅の逓減は極端に小さい。
またこの塔は、各種の軸部にくらべて屋根の幅が大きく、したがって軒の出が深い。また桧皮葺きの軒先がかなり厚い。しかし、緩い勾配と逓減の小さい各種の屋根が、見上げる目前の空に積み重ねたようになりリズミカルな視覚効果を生み、背後の緑に浮き上がってくる。
小さいながら自然の景観に溶け込んだ、いかにも室生山寺にふさわしい調和のとれた古典的な塔であり、室生を訪れる人々に親しまれ、魅了するのである。
☆★室生寺五重塔の塔内秘仏「五智如来坐像」
http://www.nara-shimbun.com/flash/p_hn4150.html
♪室生村の室生寺で公開されている五重塔(国宝)の塔内秘仏「五智如来坐像」が
参拝者の関心を集めている。解体修理が終わった五重塔の落慶法要が10月21日
に行われる予定で、五智如来像もそれまでに塔内に戻される。以後は数10年先
の桧皮(ひわだ)屋根のふき替えまでは、塔内から出されることはないため、ひと
目見ようと、多くの参拝者が訪れている。
♪五智如来坐像は、五重塔初層に安置される5体の仏像。江戸時代の作とされ、
大日如来(像高36.7センチ)を中心に、阿しゅく如来(同27.5センチ)、宝生如来
(同27.6センチ)、阿弥陀如来(同27.6センチ)、不空如来(同28.4センチ)の5体が
並ぶ。いずれも、ヒノキ材割矧(わりは)ぎ造り。室生寺が真言宗となった江戸期
に、それまで塔内に安置していた仏像と入れ替えて安置したとみられている。
♪普段は塔内に安置されているため見ることはできないが、平成10年の台風7号
で被害を受けた五重塔を解体修理に伴って塔内から運び出され、本堂に安置。
初めて一般に公開された。
♪このほど五重塔の解体修理が終了し、五智如来像も塔内に戻される。10月21日
に落慶法要が行われる予定で、公開されるのはあと2ヵ月ほど。次に姿を現わす
のは、塔の桧皮屋根をふき替える数10年先になるという。
※1998年9月の台風7号による被害を受け、修復が行われていた五重塔が、1年3カ月ぶりに優美な姿をのぞかせた。落慶法要が10月21日(予定)に営まれる。
赤目四十八滝
赤目四十八滝探勝MAPと写真
歩いても歩いても滝が連なる赤目四十八滝は、伊賀と大和の国境を流れる滝川の上流。海抜300〜600mの落差がこの滝群を造っている。一般に四十八滝と呼ばれるのは弥陀四十八願にちなんでいる。
実際の滝はそれ以上にあり、数えだすときりがないという。渓谷美と清流を思う存分楽める。
探勝路は、綺麗に整備されており、歩きやすい。道のりは、役行者が修行したという行者滝から神秘的な岩窟滝まで約4km、所要時間は1時間30分。
22の主だった滝には、千手滝、乙女滝、雛壇滝などなるほどとうなずける名前が付いている。代表格の赤目五瀑は下流から、かって信仰の対象とされた不動滝、千手のような千手滝、白布のように落水する布曳滝、2つの滝が並ぶ荷担滝、滝壷を持つ琵琶滝の五つ。瀬音と滝の美しさが足の疲れを感じさせない楽しい道だ。
夏場は緑と水しぶきが涼しさを誘い、秋は紅葉が美しく、赤目の滝はオールシーズン素晴らしい。
また、赤目四十八滝入り口付近にはホテル「対泉閣」があり、ラドン含有の人気の天然温泉がある。
入浴のみもでき、滝を見たトレッキングの後は温泉を浴びれば、旅の疲れを癒してくれる。