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本日、颯聲会創立85周年・丹生会創立15周年の記念会が大阪市中央区の山本能楽堂にて盛大に催され、図らずも幽玄の境地を愉しんでまいりました。 素謡、舞囃子、狂言、仕舞と次々と能舞台の上で演じられ、十分に機運が乗って来た頃、お目当ての十場さんと初舞台のお孫さんによる「安宅」が厳かに披露されました。 会場一杯に響き渡る大曲「安宅」(勧進帳)の素謡に魅了され酔いしれました。 拝啓 異常としか言いようのなかった夏が過ぎまして、やっと秋らしい日々が訪れてまいりました。皆様にはお変わりなく、ご清祥の毎日をお過ごしのこととお慶び申し上げます。 さて、私はかねてより義父(故、竹次郎)、義兄(一郎)を師に謡曲稽古を楽しみ精進してまいりました。能楽の世界をこよなく愛しておりました妻に縁でこの道に親しんで参りましたが、その雅味と奥深さにどれほど心の豊かさを得たかもしれません。 その稽古の一節として、このたび大曲「安宅」の素謡を勤めさせて頂きます。 少年に古典の空気を感じさせる大事さを思い、孫の祐太朗も共に初舞台を体験させて頂きます。お時間御座いましたらご来遊下さいますよう伏して一筆ご案内申し上げます。 昔日の稽古の日々、身近にあって最も厳しい師であり、また辛辣な評論家であったのは亡き妻でありました。そのようなことを懐かしく思い出しながら、義父が生涯かけた颯聲会85年の歴史を寿いで、精一杯に舞台を勤めたいと思っております。 敬具 平成15年秋 十場 吉三拝
※安宅の解説 源義経は、兄の頼朝の追っ手を逃れるため、仮に山伏の姿となって、奥州の藤原を頼るべく、北陸道を下って行きました。一方頼朝は、それを知って、要所に新しく関所を作らせ、山伏の通行を一切禁じました。 |