ホームページへ戻る

幽玄の境地を愉しむ
颯聲会創立85周年・丹生会創立15周年
  記 念 会



初舞台の孫の祐太朗さんと十場さん
2003.11.9

 
本日、颯聲会創立85周年・丹生会創立15周年の記念会大阪市中央区の山本能楽堂にて盛大に催され、図らずも幽玄の境地を愉しんでまいりました。

 素謡、舞囃子、狂言、仕舞と次々と能舞台の上で演じられ、十分に機運が乗って来た頃、お目当ての十場さんと初舞台のお孫さんによる「安宅」が厳かに披露されました。
 会場一杯に響き渡る大曲「安宅」(勧進帳)の素謡に魅了され酔いしれました。


 拝啓 
 異常としか言いようのなかった夏が過ぎまして、やっと秋らしい日々が訪れてまいりました。皆様にはお変わりなく、ご清祥の毎日をお過ごしのこととお慶び申し上げます。
 さて、私はかねてより義父(故、竹次郎)、義兄(一郎)を師に謡曲稽古を楽しみ精進してまいりました。能楽の世界をこよなく愛しておりました妻に縁でこの道に親しんで参りましたが、その雅味と奥深さにどれほど心の豊かさを得たかもしれません。
 その稽古の一節として、このたび大曲「安宅」の素謡を勤めさせて頂きます。
少年に古典の空気を感じさせる大事さを思い、孫の祐太朗も共に初舞台を体験させて頂きます。お時間御座いましたらご来遊下さいますよう伏して一筆ご案内申し上げます。
 昔日の稽古の日々、身近にあって最も厳しい師であり、また辛辣な評論家であったのは亡き妻でありました。そのようなことを懐かしく思い出しながら、義父が生涯かけた颯聲会85年の歴史を寿いで、精一杯に舞台を勤めたいと思っております
        
                                              敬具

                         平成15年秋       十場 吉三拝 


十場さんと初舞台のお孫さんの「安宅」が厳かに披露された
能楽堂の会場一杯に響き渡る大曲「安宅」の素謡に魅了される

安宅の解説

 源義経は、兄の頼朝の追っ手を逃れるため、仮に山伏の姿となって、奥州の藤原を頼るべく、北陸道を下って行きました。一方頼朝は、それを知って、要所に新しく関所を作らせ、山伏の通行を一切禁じました。
 義経一行は、加賀の国安宅まで来て、関所のことを知りました。弁慶の考えから、義経を強力に扮して、関所を通ろうとしました。安宅の関守の富樫は、この一行に向かって、全員打ち首といいます。弁慶は、本当の山伏を装って、最後の祈祷をしたり、ニセの勧進帳を読んだりして、何とか通行の許可が出ました。しかし関守は、強力姿の義経を通しません。弁慶は本当の強力に対するように、金剛杖で義経をたたき据えます。富樫は、弁慶の気迫に負けて、全員を通します。
 義経の一行は、虎の尾を踏んだ心地でしたが、弁慶の機転と、八幡の加護で、この難関を切り抜け、奥州へ下って行きました。

戻る